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医療の特殊性それとも…

先日、ある医療機関のホームページの件で打ち合わせに行ってきました。スタッフ紹介のページを更新するためです。今回はスタッフの笑顔写真の集合体を掲載しようと考えたのです。

その理由は、病気を抱えて不安な毎日を過ごしている患者さんがこのホームページをごらんになったとき、安心できるというイメージを与えたかったからです。

特に初めて訪れる患者さんは「どんな病院なの?」と不安に思っておられることが多いためそれを解消したかったのです。(特にこの病院さんの場合は情緒不安定になりがちな疾患を抱えた患者さんが多い。)

そこで、ホームページを訪れた瞬間

「あ、何かこの病院良さそう!」

「優しそうなスタッフが多そう!」


と感じていただきたかったのです。人が病院を選ぶ時技術や実績を重視しますが、特段の病気でもない限りイメージで選ぶ傾向も強くなっています。そこを私は狙ったわけです。

しかし、予期せぬことが起こりました。ある部門のスタッフのほぼ全員が写真に写りたくないと断られてしまったのです。


「これって個人情報じゃないですか…」

「写真は苦手なので…」

「こういうアングルの写真とは思わなかった…」

「恥ずかしい…」


など様々な理由からです。顔写真と名前が一致するような表示にはしない、お客様の立場で考え直して欲しい…、と説得を試みたのですが、結局了解いただけませんでした。

このことは、当人たちに事前に伝えていたのですが、なぜ理解いただけなかったのか?しばし、振り返ってみることにしました。

まず、医療と一般企業との違いについて改めて考えてみます。医療界には


「医療は営利を追求してはいけない」


という不文律があります。これは厳然と医師法に謳ってあります。では、一切現実に医療機関は営利を得ていないかというと決してそんなことはありません。昔は、高額所得者の上位にいつも医師や医療法人がランクされていました。どこか矛盾しているようでもありますが、これが医療スタッフ、特に専門職の方々の心の根底にあるように思います。

ですからスタッフは患者さん自体には真剣には向きあっていても、組織を維持する、必要利益を確保するといった組織特有の論理には若干馴染みにくいのかもしれません。そんな気がします。


また、医療界の人手不足も一因かもしれません。医療機関は法律で厳密にスタッフ数の確保が義務付けられています。このスタッフ数を割り込むと厳罰が下ります。だから、あまり強くモノが言えない。これが企業だとしたら、「方針を理解してもらえないのならとっとと辞めてもらって結構」となるのですが、そうもいかない現実が医療界にはあります。

今回、医療の世界と一般企業の世界の違いを感じたことも事実です。しかし、私は敢えてこれを医療界の特殊性で片付けないことにしました。

一般企業にせよ、医療機関にせよ、

社員と経営者が価値観を共有し、一つの目標に向かって進むことでみんなの気持ちが一体化して組織として大きなパワーとなる。


これは企業だろうと医療機関だろうと同じです。常にそうした努力を我々も常日頃からやっておく必要があります。そうした観点から、

「なぜ、ホームページにスタッフ紹介が必要なのか?」

「なぜ、笑顔の写真が入っていた方がいいのか?」

ということを経営者はもとより、スタッフに至るまで私自身が事前に相手方とすり合わせをして「写ってもいいかな」という雰囲気づくりをやっておくべきではなかったのではないかと反省しました。

私自身、次回そのようなアドバイスまでできるようスキルアップしていこうと思います。
by yongenso | 2011-10-30 12:04 | 医業PRのヒント


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